特発性大腿骨頭壊死症について②
こんにちは。ホームページの中の人、石坂公介です。前回の大腿骨頭壊死症①ですが、わかりにくい部分などなかったでしょうか。本日は大腿骨頭壊死症の治療について書いていきます。
千原ジュニアさんの行った人工股関節置換術は、その名の通り『人工物で股関節を全て取り換える』手術です。股関節は大腿骨と受け皿である骨盤によって構成されていますが、大腿骨側は骨頭を取って人工骨頭とステムに、骨盤側をカップにそれぞれ置換する手術です。術後早期に歩行訓練ができるので、仕事内容によっては早めの社会復帰も可能です。千原ジュニアさんはベテランですので体を張る仕事(肉体労働)も少ないでしょうから、比較的早くテレビ復帰されるのではないでしょうか。
左図:外側がカップ、白いのが軟骨の代わり、ピンクが骨頭です。
中図;ステム(大腿骨の中に収まります)
右図:術後のX線
(左図、中図は股関節学(金芳堂)より抜粋。実際の比率は異なります。)
もちろん手術ですので合併症もあります。脱臼、感染、静脈血栓症など重篤なものも多くありますが、手術方法の進歩、抗生剤の使用、弾性ストッキングの着用や抗凝固薬の内服などを行うことで合併症率は低下しています。安心、安全に手術を受けることができるため、人工関節の手術を受ける患者さんは年々増加しています。ただし、脱臼や感染などがなければ一生安心かというと、そうではありません。
機械や道具も長年使っていると徐々にガタがきます。人工関節も摩耗したりゆるんだりしてくることがあるのです。使用する器械によって異なりますが、術後20年で概ね90%前後は問題なくもつことが報告されていますが、裏を返すと術後20年で数%の人は再手術(再置換術)が必要になるということです。
Wikipediaによると、千原ジュニアさんは今月30日で48歳をむかえます(おめでとうございます)。ある報告では、現在48歳の男性の平均余命は34.98年だそうです。術後年数が増えるほど再置換術の確率は高くなりますので、もしかすると千原ジュニアさんは生涯のうちに再置換術が必要になるかもしれません(その頃は大御所でしょうね)。
人工股関節置換術を受ける方の原因の大半は変形性股関節症ですが、変形性股関節症の患者さんの多くは60代、70代、80代の方です。一方で特発性大腿骨頭壊死症の方は①で書いた通り、30代や40代、もしくはそれ以上若い方も多くいらっしゃいます。もし20代で人工関節の手術をした場合、一生涯のうちに2度3度と再手術が必要になってしまうかもしれません。そのため特発性大腿骨頭壊死症の治療選択は、年齢が一つのカギになってきます。
勿論若くとも、壊死が進行していたり、早めの社会復帰を希望したりする場合に、人工関節の手術に踏み切る方は多くいらっしゃいます。千原ジュニアさんも主治医や家族、吉本興業ともよく相談したうえで決められたのだと思います。
では、もっと若い方、進行の程度が軽い方、社会復帰に時間的な余裕がある方、人工関節を先延ばしにしたい方などにはどのような治療法があるのでしょうか。
長くなってしまったので、続きはまた次回にします。長くなってすみません。
石坂公介